お葬式コラム

焼香の作法と宗派別マナー|回数・順番まとめ

マナー
- 2025.11.01(土)

お葬式や法要で焼香の順番が回ってきたとき、
「何回あげればいいの?」「どうやって手を動かすの?」と迷った経験はありませんか?

焼香は、故人への冥福を祈り、心を込めて礼を尽くす大切な儀式です。
しかし、宗派によって焼香の回数や作法が異なるため、
正しいマナーを知らないと「失礼になっていないか」と不安になる方も多いでしょう。

この記事では、焼香の基本的な作法から宗派別の違い、立礼・座礼の動作まで
40〜70代の方向けにわかりやすく解説します。

1. 焼香とは?その意味と目的

「焼香(しょうこう)」とは、香(こう)を焚き、その香りを仏前に捧げる行為のこと。
香の煙を通じて、心の清めと故人への追悼の意を表します。

古くは「香を焚いて場を清める」という意味があり、
現代でも葬儀や法要では欠かせない儀式として受け継がれています。

焼香の行為には、次のような気持ちが込められています。

  • 故人への冥福を祈る

  • 自らの心を清める

  • 仏・菩薩への敬意を表す

つまり、焼香は単なる「形式」ではなく、心を込めて手を合わせるための所作なのです。

2. 焼香の作法(基本の流れ)

焼香には、主に「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」の3つの形式があります。
いずれも共通して「静かに・丁寧に・心を込めて」が基本です。

■ ① 立礼焼香(立ったまま行う場合)

葬儀会場やホールで最も多い形式です。

基本の流れ:

  1. 焼香台の前に進み、一礼する

  2. 数珠を左手に持ち、右手で香をつまむ

  3. 香を額の高さまで掲げ(宗派により異なる)、香炉に静かに入れる

  4. 焼香が終わったら合掌(両手を合わせ、目を閉じて祈る)

  5. 一礼して席に戻る

※歩く際や動作中は、音を立てず、ゆっくりと丁寧に行うのがマナーです。

■ ② 座礼焼香(座ったまま行う場合)

自宅や寺院などで行われる葬儀・法要で用いられます。

基本の流れ:

  1. 正座したまま軽く一礼

  2. 焼香台に両手で体を支えながら進む

  3. 香をつまみ、額の高さまで持ち上げてから香炉に入れる

  4. 合掌して一礼

※立ち上がらないため、姿勢を崩さず静かに行うのがポイントです。

■ ③ 回し焼香(小規模な法要など)

法要や通夜でよく見られる形式です。
焼香炉が盆の上に載せられ、参列者の間を回していきます。

基本の流れ:

  1. 焼香炉が自分の前に来たら、軽く一礼

  2. 香をつまみ、額の高さまで上げて香炉に入れる

  3. 合掌して一礼し、次の人へ静かに渡す

※テーブルの上などで行う場合は、香炉を動かさずに焼香します。

3. 焼香の回数は宗派で異なる

焼香の作法で特に迷いやすいのが「回数」です。
実は宗派によって回数や手順が異なります。

以下に、代表的な宗派別の焼香回数をまとめました。

宗派名

回数

作法のポイント

浄土真宗本願寺派(西)

1回

香を額にいただかず、そのまま香炉に入れる

浄土真宗大谷派(東)

2回

1回目は額にいただき、2回目はいただかずに香炉へ

浄土宗

1〜2回

1回目は額にいただき、2回目はそのまま入れる

真言宗

3回

毎回香を額にいただく

曹洞宗

2回

1回目は額にいただき、2回目はそのまま入れる

臨済宗

1回

香を額にいただく

天台宗

3回

毎回香を額にいただく

日蓮宗

1〜3回

回数に厳密な決まりはないが、3回が多い

※宗派がわからない場合は、**「1回」**にしておくと無難です。

4. 宗派別の焼香作法の特徴(わかりやすく解説)

■ 浄土真宗

「香を額にいただかない」のが特徴。
これは、「仏や故人に功徳を届ける」というよりも、阿弥陀仏に感謝を示す行為とされているためです。

  • 西本願寺派:1回(いただかない)

  • 東本願寺派:2回(1回目だけいただく)

■ 真言宗・天台宗

仏・菩薩に対して供養の意を表すため、3回行います。
「身・口・意(しん・く・い)」=身体・言葉・心を清める意味が込められています。

■ 曹洞宗・臨済宗

禅宗では「静かに心を整える」ことが重視されます。

  • 曹洞宗:2回(1回目いただく)

  • 臨済宗:1回(いただく)

静寂の中で一礼・合掌を丁寧に行うのが作法です。

5. 焼香の順番と立ち振る舞い

焼香の順番は、一般的に以下の流れになります。

  1. 喪主・遺族

  2. 親族

  3. 友人・知人・一般参列者

葬儀場では司会者やスタッフが案内してくれるため、
無理に前へ出ず、指示に従って動きましょう。

焼香の際は、他の参列者に背を向けすぎないように注意し、
**「静かに・ゆっくり」**がマナーです。

6. よくある間違い・注意点

● 焼香の回数を間違えた

→ 心を込めて行えば問題ありません。回数よりも「丁寧な所作」が大切です。

● 数珠を忘れてしまった

→ 手を合わせるだけでも構いません。焦らず静かに祈りを捧げましょう。

● 焼香の順番を間違えた

→ 焼香は「気持ち」が最も大切。前後しても、故人への敬意があれば失礼にはなりません。

● 焼香の香を落とした

→ 焦らず拾わずにそのままで構いません。スタッフが対応してくれます。

7. 焼香のマナーを守る心構え

焼香は「正解」を求める儀式ではありません。
一番大切なのは、故人への感謝と祈りの心を込めることです。

どの宗派であっても、以下の3つを意識すれば失礼にはなりません。

  1. 落ち着いた所作で、静かに行う

  2. 順番を守り、慌てずに行動する

  3. 焼香後は深く一礼し、感謝の気持ちを伝える

形式にとらわれすぎず、心から手を合わせることが何よりの供養になります。

8. まとめ:迷ったら「1回・静かに・丁寧に」

最後に、焼香マナーの要点をまとめます。

ポイント

内容

焼香の意味

心を清め、故人の冥福を祈る

回数の基本

宗派により1〜3回(迷ったら1回)

作法の基本

静かに・丁寧に・心を込めて

焼香の形式

立礼・座礼・回し焼香がある

葬儀や法要の場では、誰もが緊張するもの。
大切なのは、形式よりも故人を思う心です。

一礼・合掌・焼香のひとつひとつに、
「ありがとう」「お疲れさまでした」という思いを込めて行いましょう。